Startups Macedonia Expand Launchpad
Expand Macedoniaとは
Startups Macedoniaが主宰する、マケドニアに拠点を持つスタートアップ企業の海外展開支援を目的とするプログラムです。
Startups Macedoniaは以下の活動を実施しています。
- スタートアップ&イノベーションのエコシステムを強化する。
- 意識改革と機会の創出によるマインドセットの変化への影響
- エコシステム要素間のコラボレーションと相乗効果を促進する。
- 国内および海外からの投資を促進する。
- スタートアップコミュニティと政策立案者の間のギャップを埋める。
- 成長のためにデータ駆動型のエコシステムを構築する。
- スタートアップ企業のグローバルな事業展開を支援する。
- サクセスストーリーのプロモーションやメディアへの掲載を行う。
- イベント、ハッカソン、デモデイ、カンファレンス、ブートキャンプのサポート
- 海外のファウンダーやアントレプレナー・イン・レジデンスを温かく迎える。
- 新ヨーロッパのスタートアップ・ハブとしての位置づけを目指します。
今回のプログラムでは、basicmathと36chambersが、応募の中から選定したスタートアップ企業に対して日本とドイツへの市場参入を2021年6月〜12月までの期間サポートいたしました。
募集対象はすでに自国でプロダクトと顧客を持つ企業が中心で、選定した5社の企業に対して、メンタリング等のセッションを通じてサポートを実施しました。
Vision Dynamix
https://www.visiondynamix.com/
ドローンで撮影した動画によって3Dマッピングを可能にするソフトウェア。一般的な製品の数倍もの速度でデータ解析が出来る上、ソフト形式なのでWEB環境無しでも利用出来る。
Matryoshka
https://www.the-matryoshka.com
フレーバーではなく「本物の」ワインを使用して作られたアイスクリーム「WICE」を開発。150mlに13.5%のアルコールを含んでおり、ワインを飲んでいるような体験が得られる。
Creative Hub
需要が高まっているグラフィックデザインやデジタルマーケティングのオンライン教育コンテンツを提供。多くの企業と連携することで、教育後の就職に関しても一貫してサポート出来るサービスを構築。
Pro Dizajn
AR技術を使用したモックアップ作成、ビジュアライゼーションアプリ。
doXmenu
簡単にオンラインメニューと注文システムを構築出来る飲食業向けのアプリ。飲食店用にカスタマイズされているので30分程度でメニューの設定や、ユーザー用のQRコードの作成することが可能。
提供するプログラムの内容について
プログラムは3つのステージが想定されています。各ステージでは主に下記のゴールを目指しておりますが、参加企業の状態によってプログラム内容などはチューニングされる予定です。
ステージ (1) – Education
- オンラインでの講義形式のトレーニング。
- 日本とドイツの企業体系やビジネスカルチャー等を紹介。
ステージ (2) – Refining and Producing
- オンラインでの講義形式のトレーニングを基本として、1on1セッションも予定。
- 日本のマーケット理解に基づいて、販売戦略等を紹介。
- 実際の顧客開拓やプロダクトのローカライズについて相談。
ステージ (3) – Connection
- 商談を希望する企業を日本、ドイツで見つける。
- セールスを実行に移していく。
basicmathがサポートする企業
書類審査や創業者へのインタビューを通してbasicmathは「Vision Dynamix」をサポートすることを決定しました。その他の企業についてはコミュニケーションは継続しつつ、今回は36Chambersによる欧州進出サポートの対象となりました。
Vision Dynamixとは?
Vision Dynamixは、マケドニア出身のDushko Murtovski氏によって創業されました。Dushko氏は大学院でロボティクス、システム・エンジニアリングを専攻しており、卒業後は長年ソフトウェアエンジニアとして活躍。
その技術を生かして、より早くより使いやすく3Dマッピングソリューションを開発しました。マケドニアでは複数のトライアルプロジェクトが利用が始まっており、マケドニア以外の欧米各国でも販売計画が進行しています。
なぜbasicmathはVision Dynamixを選定したのか?
私達は主に以下の理由によって決定に至りました。
- 日本でも競合優位となりうるテクノロジーを保有していること
- 災害大国である日本では特に利用価値の高いソリューションであること
- 建設業界や、ドローン技術のナレッジを保有するメンバーが弊社内にもいるため協業しやすいこと
セッションの具体的な内容
basicmathは6~7月での計2回のセッションに加え、日々のコミュニケーションを通じてVision Dynamixへのメンターシップを実施しています。
セッションでは主に下記の内容を取り扱いました。
2回目までのセッションで最も重要な内容は「実際に日本市場に参入する際のハードルや、それが存在する理由の理解」と設定しています。
例として、メインのトピックスをご紹介します。
第1回目
- 日本の歴史基礎
- どのように現在の社会が形成されたか。なぜ日本は縦社会だと言われるのか。
- なぜ日本には外資企業や外国人が少ないのか
- なぜ高度成長は止まり、その後日本から世界的なITの大企業が生まれづらいのか
第2回目
- 日本のビジネス環境基礎
- 日本の組織はどのような構成なのか。なぜ海外よりもプロセスに時間がかかるのか
- 日本でITサービスを立ち上げる際のポイント(ブランディング、プライシングなど)
- 日本で事業を行う上でのリスク(細かなサポートや法律的なハードルなど)
上記の内容を対話形式でレクチャーすることで知識を深めてもらいながら、私達自身もマケドニアやVision Dynamixのカルチャー、ビジネスについての理解を深めています。
セッションを通して感じた日本とマケドニアの違い
すでに何度もDushko氏やその他のマケドニアスタートアップの創業者と話をしていますが、その中で感じることをいくつかご紹介したいと思います。
最初から世界を目指すプロダクト開発と販売戦略
なんといってもここが一番日本との違いを感じる部分です。
開発当初から欧州やアジア、アメリカでの販売を視野に入れて開発しており、36Chambersが支援する企業の中にも、すでに欧州各国からの資金調達が決定している企業もあります。グローバルな戦略の一環として、特にVision Dynamixがいま求めているものは「より多くのサービス利用とそこから得られるフィードバック」です。いまの製品で目先の利益を上げるよりも、まずは様々な国、建設領域のユーザーに使用してもらい、そこから得られるフィードバックによって、より優れたプロダクトへと改善していくことを第一優先としています。
このようにマケドニア企業が最初から世界戦略を描ける理由としては「言語や文化」と「経済規模」の2つがあるのではないかと思っています。
1つ目の文化について、
マケドニアは第2外国語として英語が普及しているので、サービスの開発は英語で行われますし、気軽に欧州に移動することも可能なので文化的に国外進出のハードルが低いことが想像できます。
これに対して日本で英語が話せる人口はわずか5%とも言われており、世界戦略が描きづらい環境はありそうです。
2つ目の経済規模について、
マケドニアは人口200万人で、ほぼ群馬県単体と同程度の人口規模しかない国です。ですので国内マーケットを狙うよりも、国外のマーケットを含めて狙っていくインセンティブが日本に比べるとより強く存在していることを感じます。
エンジニア人気が高い
セッションの中では「日本にエンジニアはどの程度いるのか?」「日本ではエンジニアの初任給はどのくらいなのか?」といったエンジニアに関する質問を受けることが多くあります。話を聞くとマケドニアではエンジニアは将来性ある職業として人気で、かつ平均初任給も他職種と比べるとかなり有利である点が伺えます。これに対して日本は、現在でも半数以上が文系の大学に進学して、文系職につくこともまだまだ一般的です。良い悪いといった話ではないですが、日本からITサービスが生まれる可能性という面では、外国と比べて不利な状況が続きそうです。
他国の歴史や文化への関心が高い
マケドニアという国についてどれだけ知っているか?というと、自信持てる方は少ないと思いますが、マケドニア人は日本やアジアの歴史に関する知識などを、すでに一定程度持っていることに驚きます。知識があるだけでなく、積極的に質問をして少しでも理解をしようとする姿勢があります。
例えば、「日本の商品は高くて良いものが多いが、逆に安いと品質が低いと思われてしまうのではないか?」「日本人は細かいところを気にすると思うので、詳しい動画マニュアルがあった方が良いのではないか?」といったような、具体的な質問を数多く受けます。
もちろん全てのマケドニア人や日本人に共通するものではないですが、このようなスタンスの部分も、世界で勝負をしようと考えるときには重要になってくることを改めて認識します。
本プロジェクトが持つ意義
世界には、魅力的ではあるが知られていないプロダクトやサービスが無数にあります。
一方で、ユニークな最先端の海外発ソリューションを導入検討する機会は、多くの日本企業にとってはまだ一般的ではありません。本プロジェクトを通じ、私達は世界のスタートアップとの連携を一層強化して、革新的なサービスを日本企業の皆様にご紹介して参りたいと考えています。