地方の観光誘客におけるSNS活用の現状と課題: 某観光連盟様の事例から

本記事では、某地方観光連盟様の事例を通じて、地方でのSNS運用に関する現状と課題、そして当社の取り組みと得られた成果についてご紹介いたします。- 観光DX推進の取り組み

地方の観光誘客におけるSNS活用の現状と課題: 某観光連盟様の事例から
Photo by Pawel Czerwinski / Unsplash

1. はじめに

現代の観光客の誘致活動において、SNS運用は地域の魅力を発信するために欠かせないツールとなっています。当社では運用代行やコンサルティングとは少し異なり、Instagramを活用した効果的なプロモーションをクライアント様が自ら行えるよう、悩みや課題に寄り添って伴走する形でのアカウントグロース支援を行っています。

本記事では、A観光連盟様の事例を通じて、地方でのSNS運用に関する現状と課題、そして当社の取り組みと得られた成果についてご紹介いたします。

2. 地方におけるSNS運用の現状

観光誘客におけるSNSの重要性

現在、日本全国の様々な行政・団体・観光事業者がそれぞれにSNSアカウントを開設し、地域の魅力発信と観光客の誘致を目的とした運用を進めています。特にビジュアルコンテンツがメインとなるInstagramは、観光地の美しさや特産品の魅力を視覚的に伝えることができるため、認知度を高めながら潜在的な観光客の興味を引くことができる最適なプラットフォームと言えます。

地方自治体や観光事業者の課題

地方の行政・団体や観光事業者の皆様が抱える共通の課題として、ユーザーが本当に興味を持っているコンテンツを特定できず、効果的なコンテンツマーケティングやターゲティングができていない点が挙げられます。特にSNS運用においては、戦略的な計画立てや継続的な分析が不十分な場合が多く、リソースやノウハウの不足が原因となっていることが少なくありません。私たちのクライアントであるA観光連盟様も、同様の課題に直面していました。

3. A観光連盟様の事例紹介


A観光連盟様への支援概要

支援先: 某地方観光連盟様  
支援期間: 約1.5ヶ月間  
使用アカウント: クライアント様が管理する公式Instagramアカウント  
支援の目的: 公式Instagramアカウントのグロース、現状と課題の把握および今後の運用方針の提案

実施内容:
- 指定されたキーワードによるハッシュタグ調査
- Instagramコラボ機能によるUGC活用調査
- Instagram広告によるユーザーの反応調査

Instagramアカウントグロース支援開始前の課題


A観光協会様が抱えていた課題は以下の通りです。

既存のInstagram投稿ハッシュタグキャンペーンの効果低下:

数年間にわたり、毎年同じ内容のハッシュタグキャンペーンを実施していましたが、特に効果を感じることができなくなっていました。同じキャンペーンを繰り返していたため、ユーザーが飽きてしまい、興味が失われた結果エンゲージメントが減少したものと推測されました。
また直近ではInstagram投稿キャンペーンという仕組み自体の効果が非常に限定的となってきていることが理由の一つとしてあげられます。*この辺りのレポートについては今後別の記事でご紹介させていただきます。

限られたコンテンツ投稿:

公式アカウントではキャンペーンに投稿されたユーザーの画像を紹介する投稿のみを行い、ユーザーに対して新鮮さや興味を引くコンテンツを提供できていませんでした。そのためフォロワー数やリーチ数が伸び悩んでいました。

当社は公式Instagramアカウントについて3つの取り組み(「UGC活用」「広告による調査」「ハッシュタグ調査」)を実施し、A観光協会様に現状と課題を把握いただきながら、今後のInstagram運用の方針を考えるために必要な情報をレポートにて提供させていただきました。

4. 実施事項の詳細


指定されたキーワードによるハッシュタグ調査

まず、A観光協会様が指定された特定のキーワードをもとに、SNS上でそのキーワードがハッシュタグとしてどのくらい使用されているかを徹底的に調査しました。この調査は以下のステップで行いました。

関連ハッシュタグの選定:

A観光協会様が管轄するエリアの観光名所、イベント、季節ごとの特産品などに関連するキーワードをご指定いただき、これを「グルメ」「観光地」「アクティビティ」の3つのカテゴリに分類し、ハッシュタグリストを作成しました。

指定ハッシュタグと類似ハッシュタグの投稿数等の調査:

選定した各ハッシュタグの投稿数を確認し、類似ハッシュタグとの投稿数を比較しました。その結果、以下のような傾向が確認できました。

グルメ:
食材名よりも、その食材を使った料理を提供している店舗名自体をハッシュタグとしているユーザーが非常に多かったことから、Instagramユーザーは食材そのものではなく店舗名を検索対象としていることが示されました。

観光地:
ツーリングやドライブ、ペット連れの旅行といった個人的な趣味や関心が反映された画像がエンゲージメント(いいねやコメント数など)が高い傾向が確認できました。例えば神社であれば、鳥居だけの画像よりも、鳥居の前に自転車が置かれている画像のほうに注目が集まっていました。

アクティビティ:
ユーザーが体験中に自分で撮影ができない環境のアクティビティスポットが多く、投稿が少ない状況でした。ユーザーが体験中に撮影しやすい環境の整備と、SNSでの共有を促す仕組みの導入が求められます。

Instagramコラボ機能によるUGC活用調査

A観光協会様の公式アカウントにて、ユーザーとの共同投稿を実施する取り組みを試験的に実施しました。この調査は、以下のステップで行いました。

UGCとは:
UGCとはUser Generated Contentの頭文字を取ったもので、日本語ではユーザー生成コンテンツと呼ばれます。SNSは公式アカウントによる情報発信に目が向けられがちですが、実は一般ユーザーからの投稿(UGC)が反響を呼び、集客に大きく貢献することが知られています。

対象エリア内のグルメ・観光地・アクティビティ投稿をピックアップ:
ある程度のフォロワー数を持つアカウントによるフィード投稿またはリール投稿をピックアップしました。

対象投稿の選出と交渉:
ピックアップした投稿から、共同投稿にご協力いただきたいユーザーへDMで直接交渉を行いました。

投稿の実施と分析:
共同投稿を実施し、その後のパフォーマンスデータを取得し、分析を行いました。結果として、以下のような調査結果を得ることができました。

グルメ:
共同投稿者のフォロワー数と、エンゲージメントが必ずしも比例しないことが大きな気づきでした。対象となる飲食店が3者目の共同投稿者として参加した投稿は、リーチ数が大きく伸びました。

観光地:
ツーリングやペットなど、特定の趣味やアクティビティが反映されている投稿のほうがリーチやエンゲージメントを大きく伸ばしました。

アクティビティ:
体験した内容が詳細に分かる画像や動画のほうが良い反応を得やすい傾向がありました。

インバウンド:
日本らしい特別でユニークな体験の英語によるUGC投稿をピックアップし共同投稿を実施した結果、多くのリーチやエンゲージメントを得られました。

共同投稿:
一般ユーザーからの投稿が持つ「親近感」「リアルな良さ」に公式アカウントの「信頼感」が組み合わさり、投稿パフォーマンスが従来より大きく向上することが確認できました。

投稿コンテンツ:
個人の趣味が反映された画像や動画の投稿パフォーマンスが非常に良かったことから、「どんな人が何の目的でこの場所を訪れたのか」と想像できるようなコンテンツの発信が重要であることが分かりました。

地域事業者との連携:
共同投稿者が増えると拡散されるユーザー数も増えるという特性もあり、地域事業者との連携はパフォーマンス向上の点からも有効です。さらに、A観光協会様のような公的機関の観光誘客施策を展開していく場面において、地域事業者との日々の連携は欠かせません。共同投稿はコストや負担感を抑えながらも理解を得やすい方法のひとつであり、長期的な協力関係を作る一助となることが期待できます。

Instagram広告によるユーザーの反応調査

Instagram広告を実施し、ユーザーが対象エリアのどのコンテンツ・カテゴリに反応を示すかという現状把握調査を実施しました。

広告期間: 約1週間  
広告配信面: Instagramフィード、発見、プロフィールフィード  
フォーマット: カルーセル  
広告本数: 5本  
対象エリア: 特定の4エリア

選ばれた観光コンテンツがユーザーの興味関心にどの程度マッチしているかを探る調査を行い、以下のような結果を得ました。


観光地紹介だけでは訴求力が低い:

画像・ターゲティングの見直しが必要であり、「どんなユーザーに何を伝えるのか」を再度考え直す必要性が感じられました。

体験観光への関心の高まりとInstagram上の情報量のギャップ:

体験観光の要素のある広告はクリック率が高く、多くのユーザーが興味を持っていることが確認できました。

画像は一目で魅力が伝わるものを:

Instagramのようなプラットフォームでは、一枚の画像が視聴者の行動に大きく影響を与えます。時代の変化に合わせて、使用する画像も変えていくことで、ユーザーの関心を得続ける必要があります。

まとめ

本記事では、A観光連盟様の事例を通じて、地方におけるSNS運用の現状と課題、そして当社の取り組みと気づき、成果についてご紹介しました。

観光客の誘客におけるSNSの重要性がますます高まる中で、効果的なSNS運用を行うためには、戦略的な計画立てや継続的な分析が欠かせません。しかしながら、地方においては慢性的なリソース不足や事例不足のため、独自運用にとどめている結果、運用にかけている時間やリソースに対して効果が十分に現れていないことが多々あります。

当社は今後も地方の魅力を最大限に引き出し、多くの観光客を引きつけることのできる運用力をクライアント様自身が身につけるための支援を続けてまいります。