「観光データ連携機能構築による観光事業者の収益向上に向けた実証事業」事業レポート
当社では、2022年度観光庁主宰の「DXの推進による観光・地域経済活性化実証事業」採択事業において、福井県観光DX推進コンソーシアムの一員としてプロジェクトに参加させていただきました。
https://kanko-dx.jp
https://kanko-dx.jp/case-study/82/
成果報告会資料:
https://www.fuku-e.com/lsc/upfile/articleDetail/0000/1642/1642_d001_file.pdf
実証事業の内容
【ターゲット】
福井県内の観光施策立案に携わる行政・団体職員および県内でモノ・サービスを提供する観光事業者
【開発・活用する技術・サービス】
API等連携による観光データ連携機能(データEX機能・データ流通機能)を整備
【実証実験内容】
以下の実証事業を通じ商品開発、観光施策立案につながるマーケティングデータの形成と活用につき検証する。
(1)データ連携機能の実証事業
(2)データを活用した集客ポイント造成の実証事業
(3)RENEWをフィールドとした実証事業
当社では、1・2・3の全ての実証事業領域に従事し、主にデータ収集・分析及びデータを活用したマーケティング支援を実施させていただきました。
下記にそれぞれの実証事業について説明させていただきます。
(1) データ連携機能の実証事業
<実証事業の概要>
福井県観光データ分析システム「FTAS(エフタス)」
オープンデータ化を前提として各種観光に関するデータの収集を行いデータ連携させながら、DMPである福井県観光データ分析システム「FTAS(エフタス)」にて福井県の観光の実態把握を行う。これらのデータを活用して、新たな観光地開発、観光商品開発、既存観光地や観光商品の磨き上げを行うためのデータ連携機能の実証を行う。
実証事業内容
<データ収集>
福井県観光連盟が主催するプレゼント型アンケートキャンペーンで収集するアンケートデータを始めとする観光関連データのAPI連携を推進する。本事業を通して、API連携のルールづくり、オープンデータ化のルールづくりを並行して行う。
<データ連携>
各種観光データのAPI連携を行うとともに、よりターゲットセグメントしやすいマーケティングデータとして深化させるためのデータ連携をさせた上で、オープンデータ化を目指す。
<データ活用>
数値データ・現況データを基に、市場ニーズ・ユーザーニーズの解析・分析を行い、観光プレイヤーへのマーケティング・コンサルティング等を実施。
新商品(サービス)の新規創出や売上・集客アップ等の結果を目指す。また、県内の市町の観光課、観光協会、DMOへの情報共有や説明会 を行うことで、観光施策立案のサポートを行う。
これら観光関連データの蓄積を行っていくことで、観光需要予測の設計・ 定義を行い、将来的には需要予測を基に観光事業者の仕入れの効率化などのさらなる収益化へとつなげていく。
また、オープンデータを基にした、観光系デジタル・マーケティングなどの新たなビジネス開発を狙う。
当社では、データ収集の部分において、実証事業2で収集・分析したデータをオープンデータ公開用として提出。データ活用部分においては、HAPPINESSアンケートキャンペーンデータの分析用基盤を構築し分析に活用すると共に、データ分析等のBIツールを扱った経験が少ない事業者でも見やすく理解しやすいシステムとして一般公開させていただきました。
次に「数値データ・現況データを基に、市場ニーズ・ユーザーニーズの解析・分析を行い、観光プレイヤーへのマーケティング・コンサルティング」の対象として選択された、福井県内でも最も宿泊施設が集まり認知度も高いと思われる「あわら温泉」エリアにフォーカスし、上記で構築したHAPINESSアンケートキャンペーンデータ分析や観光に関して日本国内では最も多くのデータ量を保有すると考えられる「観光予報プラットフォーム」を使用した同エリアにおけるデータ分析、ユーザー動向を知る上で最も重要なデータソースの一つであるInstagramの投稿分析を行い事業者にとってのデータ分析結果をとりまとめると共に、データ活用や分析におけるロジックをレポート化。事業者の皆様への報告会を通じて分析結果を共有させていただきました。
実証事業(1)の領域における、担当業務の詳細とポイント
データ分析基盤の構築
既にオープンデータとして公開されていたHAPPINESSキャンペーンアンケートデータの分析を実施するにあたり、まずは分析基盤の構築を実施いたしました。
まずはアンケート回答結果にどのような内容が含まれているかを精査。次に観光事業者の視点に立ち、どのような集計結果を確認することができると良いか、画面設計を考えた結果、観光目的分析・観光客分析・観光満足度分析、観光誘客分析、宿泊分析、移動手段分析、クチコミ情報という分析メニューに分類し分析画面構築を行いました。また、オープンデータプラットフォーム側は日毎に新規データが取り込まれている点に合わせ、毎日深夜に新規データの取り込みを行うべく定期実行処理についても実装しました。
福井観光DX分析サイト: https://basicmath.jp/kankodx/
データ分析の考え方やロジック・マーケティング理論についての説明
収集したデータをどのように解析・分析し、「稼ぐ観光」という目的のためにどのように活用するかというロジックの説明を試みました。
経営者の目線や担当者の感覚を軸に方針を定めてしまうと、市場ニーズとの乖離が生まれやすくなります。事業者自身の強みや弱みの把握、課題・問題に対する解決策の協議の必要性・決定についてデータを基にした組み立ての理論について説明し理解の促進を図りました。
観光予報プラットフォームデータ分析
観光予報プラットフォームを使用し、該当期間における日別の宿泊数実績・予測数、宿泊者の居住都道府県、宿泊単価、宿泊日数、同伴属性、年齢層を集計しレポート化しました。
Instagram分析
今回の実証事業において主要なデータセットの一つであるSNSの中から観光に最も関連性が高いInstagramの投稿データ(自社・ユーザー)の分析を実施しました。
分析に際しては、関連子会社であるEmbedsocial Japan株式会社(※2022年7月 日本市場における更なる拡販と市場最適化を目的としてEmbedsocial社と合同会社basicmathは共同でEmbedsocial Japan株式会社を設立しました。)が提供するEmbedSocialシステムを活用し、Instagram単体で実施する事が難しいUGC分析(いいね数などのエンゲージメント分析や投稿分析)を実施いたしました。
Embedsocial: https://embedsocial.jp
(1) 各宿泊施設のSNS運用状況の把握
芦原温泉旅館協同組合様の加盟事業者のうち公式アカウントを保有しているすべての宿泊施設について、事業者側の情報発信とユーザーの「タグ付け」投稿に関する分析を実施しました。
あわら温泉協同組合様に同エリアの全体的なSNSの活用状況とその傾向を把握していただくことで、情報発信の必要性や宿泊客側から見た魅力・課題の理解がさらに進むと考えたものです。
https://www.awara-onsen.org/
(2)Instagramハッシュタグ「#あわら温泉」分析によるユーザー動向の把握
ハッシュタグ「#あわら温泉」の投稿を収集・分析し、観光客から見たあわら温泉のイメージ及び魅力と認識されているポイントの把握を試みました。
投稿画像を俯瞰すると、投稿画像には「温泉」「客室」「足湯施設」などいくつかの傾向が見られました。しかし「あわら温泉らしさ」が現れている風景やスポットの投稿は少なく、ユーザーにとって魅力的なイメージの発信は不十分であると考えられます。
― 箱根温泉との比較
そこで、認知度の高い「箱根温泉」の情報を同様に収集し、様々な視点からあわら温泉との比較分析を行いました。
例えば最新の投稿を比較した際、箱根温泉は紅葉など季節感のある「現在」が見てとれる画像投稿が多数見られましたが、あわら温泉では宿泊施設内での食事内容や装飾の撮影が多く、季節感のない画像投稿が目立ちました。
また、箱根温泉はインフルエンサーによる投稿や宿泊施設名などをタグ付けした投稿が多く、情報拡散力が高いことはあわら温泉にとって参考になるポイントであることなどをレポートにて共有いたしました。
このように、自社が今後取り組んでいくべき課題や方向性について明確にすることを目的に、当社では同業他社との分析結果比較を積極的に実施しております。
― 市場調査(全国の温泉地の施策例)
観光コンテンツを磨き上げるとは具体的にどのような取り組みを指すのかという疑問、そしてあわら温泉エリアや各事業者が抱える課題解決策を見つける方法のひとつとして、同業他社との動向比較調査が必要であると考えました。
そこで、あわら温泉エリアが抱える課題に対する回答・参考となるものを厳選し、全国各地の15温泉地が取り組む様々な施策をピックアップして概要をまとめ、参考事例として提供しました。
成果と課題
本事業を通して、事業者側も様々なデータを活用して観光コンテンツの磨き上げや課題の把握及び改善を行う必要性は認識しており、データ活用に関する関心や意欲が高いことがわかりました。
一方、データ分析・活用の理論や手法についての知識の有無については事業者によって大きな差があり、直接的な結論を求める傾向が多く見られました。
このことから、データの分析・活用を事業者側に委ねることは現時点では難しく、地域内のマーケティング・コンサルティング事業者との繋がりの創出や、それぞれの地域や事業の性質に応じた数値・分析データを継続的に提供する取り組みの必要性を感じました。
各自治体や事業者に対してデータ分析の知識を共有しながら各自の「稼ぐ力」を高めていくという長期的視野のもと、個々の事業者と専門業者が手を携えられる枠組みが構築されることで、データの分析や活用、さらにデータを基にしたマーケティング施策の重要性に関する認知の拡散や理解の深まりが促されると考えています。
(2) 集客ポイントの開発や磨き上げ
福井県観光連盟主催のInstagram投稿キャンペーン「#私の好きな福井県2022」を活用し、任意の県内観光スポット12地点におけるユーザー投稿(UGC)及びエンゲージメント数値、さらに同地点でのGBP(Googleビジネスプロフィール)クチコミ情報を分析し、各地点の事業者と情報を共有することで観光地の磨き上げを実証する。
実証事業内容
<データ収集>
福井県観光連盟主催のInstagram投稿キャンペーンにおいて「#私の好きな福井県2022春夏」のハッシュタグを付けて投稿された約14,000件の投稿について、ピックアップされた県内観光スポット12地点それぞれの投稿傾向を分析。さらに同地点におけるGoogleのクチコミ情報を併せて収集・分析することで各地点の実情・課題把握を図る。
<データ連携>
Instagram投稿とGoogleクチコミ情報を連携させ、観光スポットの開発や磨き上げを図る。
また、収集されたInstagram投稿に付属のハッシュタグ数をFTASに追加し、季節的な需要の高まりやユーザーの関心度の推移を測る指標としての活用を目的としたオープンデータ化を図る。
<データ活用>
収集したデータから撮影スポットを地図上に表示させ、観光関連団体・DMO等に向けた新たなインスタ映えスポットの開発および既存観光スポットの磨き上げを提案する。
実証事業(2)の領域における、担当業務の詳細とポイント
- SNS投稿の収集・分析
SNS投稿の収集には実証事業(1)と同様にEmbedSocialシステムを使用し、分析には自社開発のAI言語解析システムを活用することで、手作業では多くの時間と手間が必要となるデータ収集・分析作業の短縮を図りました。レポート化するにあたっては、現状分析のみならずデータの活用による新たな施策の提案を含めることで、各観光スポットを管轄する観光協会や事業者の意欲向上とデータ活用への理解促進を図りました。
EmbedSocial: https://embedsocial.jp
― Googleクチコミ分析
観光スポットに関する多数の意見が集まることから、観光事業者にとっては来訪者の声を知ることのできるデータベースであり、観光客にとっては旅行先を調べる重要なツールとなっています。
今回は自社開発AIによってクチコミ内容を「良い」「悪い」「中性(どちらでもない)」「混在(良いことも悪いことも含む)」に分類し分析を行い、それぞれの投稿累積数を時系列でグラフ化することで事業者が過去に行った施策とクチコミの推移との関連を視覚化しました。またクチコミ全体の感情分析だけではなく、口コミに含まれるキーフレーズを抽出、キーフレーズ毎の感情分析も実施。クチコミに含まれる各キーフレーズに対する感情分析を実施することにより、より詳細な分析とサマライズを実現しました。
さらに各スポットのクチコミ内容から評価の傾向を把握し、磨き上げを図る「展開案」と改善による満足度の向上を図る「改善案」の2つの視点から、運営事業者・団体等の実情に応じた施策を提案させていただきました。
― Instagram投稿収集・分析
各観光スポットにおいて事業者側が現時点で気づいていない観光地としての魅力の発見と効果的な観光コンテンツの磨き上げを目的として、それぞれの観光スポットに関するInstagram投稿を収集し分析を行いました。
ターゲットとなる観光スポットの主要ハッシュタグを設定し、Instagramのユーザー投稿を収集。投稿総数や投稿のいいね数などエンゲージメント分析を行いつつ、ユーザー投稿の傾向や内容を分析し観光スポット毎の特徴や傾向をレポーティングいたしました。
その他、自社システムを活用し収集した投稿からハッシュタグを抽出し、期間によって集計。
季節に合わせた観光PR施策検討に役立つデータセットの一つとしてオープンデータとして提供させていただきました。提供したデータはコンソーシアム内でオープンデータプラットフォームFTASの運営や開発を担う Code for Fukuiによって可視化され、公開されました。
https://code4fukui.github.io/fukui-kanko-stat/instagram-hash-tag.html
実証事業後半では試験的な取り組みとしてAIによる画像解析を実施し、画像からロケーションの検出や画像毎のラベリングを実施することで、ハッシュタグキャンペーン全体の投稿画像の分類や分析の自動化を検証いたしました。
分析時の参考内容として、ある景勝地のInstagram投稿を分析したところ、ペット連れの投稿が県内他観光地に比べて多いことがわかりました。Googleのクチコミにおいても「ペットと入店できる飲食店が多い」「ペットと自由に散策を楽しめる」など高評価であったことから、ペットツーリズムの推進が新たな観光地の魅力創出に繋がる可能性を見出し、現地観光協会や事業者へ共有することができました。
成果と課題
AIを使用したクチコミの分析や内容の自動分類により、従来の人的作業に比べて時間を大幅に短縮することができました。また、収集したInstagram投稿付随のハッシュタグを集計・出力しグラフ化することで、ハッシュタグからユーザーの関心や興味の変動の視覚化を行うことができました。
さらにレポート作成及び提案にあたっては、クチコミ情報やInstagram投稿の実際の活用方法や目的についての理解促進を目的として、各観光スポットを管轄する観光協会や事業者に対する現状報告だけでなく、具体的な改善・展開施策まで踏み込んだ情報共有を行わせていただきました。
一方で、各観光スポットにおいて改善をご提案した内容の一部については、現場担当者は把握しているものの、改善に必要となる予算や裏付けとなるデータの不足などにより対策が遅れていた事例も見受けられました。「稼ぐ観光」を実現するためには、観光客のニーズを素早く取り込み、課題を早期に解決・改善できるシステムの構築が望まれます。
また、今後も観光地の開発・既存観光地の磨き上げを行うためには、一時的な課題解決や施策に関する様々な指摘・助言を行うだけではなく、将来を見据えた継続的なデータ収集・活用が不可欠であると考えます。
(3) キャッシュポイント開発及び磨き上げ
延べ3万人を集客する日本最大級のオープンファクトリーイベント「RENEW」を舞台に、さまざまな観光関連データを収集し、集めたデータを基にイベント参加事業者の商品開発や販売促進等をサポートすることで、事業者の収益拡大やキャッシュポイント造成に関するデータ活用の有効性を実証する。
― RENEW(リニュー)
福井県鯖江市・越前市・越前町で開催されている、持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベント。このエリアには越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼といった伝統的工芸品のほか、眼鏡・繊維を含む7つの地場産業が集まっており、イベントでの工房見学やワークショップ、ショッピングを通じて作り手の想いや背景を知り、技術を体験する企画が好評を得ている。2022年は10月7日から9日の3日間に渡って開催され、延べ37,000人が訪れた。
https://renew-fukui.com/
実証事業内容
<データ収集>
RENEW参加事業者のうち3社においてAIカメラによる来場者測定・ネット広告結果データ・POSデータ・RENEWPay決済データ・HAPPINESSアンケートデータ、SNS投稿データを収集、横断的な分析を実施。
RENEWPay
RENEW参加店舗で使用できるアプリチャージ式のデジタル地域通貨。決済日時や購入店舗、決済金額、性別や年齢層など、データ活用に必要となる情報収集に活用。
<データ連携>
RENEWPayで得られたデータの一部をオープンデータ化。また、アンケートデータ等との突合により有益なマーケティングデータ形成を図る。
<データ活用>
分析データによる現状把握だけでなく、分析結果に基づいた新商品開発や販売促進に関する提案を盛り込んでレポート化し、事業者等に共有することで収益を生み出す機会「キャッシュポイント」の開発・磨き上げを行う。
実証事業(3)の領域における、担当業務の詳細とポイント
AIカメラによる顧客層把握
来店者数とその属性(性別・年齢層)の収集を目的として、イベント期間中に対象事業者の各店舗にAIカメラを設置し、顧客属性の把握を試みました。
来場者数のカウント性能は確認されたものの、マスク着用等による年齢層の誤差が否めないことや、設置場所や運用状況により重複が生じることなど、AIカメラの精度向上・運用方法の最適化の必要性を認識しました。
ネット広告に関するパフォーマンスデータの取得・分析
RENEW及び対象事業者に関するネット広告を出稿し、パフォーマンスデータの取得・分析を実施しました。それぞれ2~3パターンの広告を出稿することで、各社の顧客属性など、事業者が商品開発や価格帯を検討する際の根拠となるようなマーケティングデータの形成を試みました。
RENEWPay決済データの分析
デジタル地域通貨「RENEWPay」を通じて地域の決済データをひとつのデータベースとして形成するため、RENEWPayにおいてプレミアム商品券の提供を実施することで消費喚起及び決済データの母数拡大を図りました。この決済データは地域にオープンデータとして提供したほか、このオープンデータをもとに弊社においても分析サイトを構築し、事業者への情報共有・販売促進等の提案の裏付けとして活用しました。
POSデータの分析
対象事業者の売り上げ関連データ(POSデータ)を分析し、売れ筋商品の価格帯・商品形態等の把握を試みました。POSデータでは顧客属性を取得することはできませんが、RENEWPay決済情報と照合することで、一部のデータについて顧客属性や顧客動向を把握することが可能であることを実証しました。
SNS投稿データの収集・分析
Instagram投稿分析
まずEmbedsocialシステムによりイベントに参加したすべての事業者名や「renew_fukui」等のハッシュタグを含む投稿を絞り込み、その投稿件数を調査した結果、Instagramを活用して情報発信を行う事業者は多いものの、ユーザー投稿(UGC)は非常に少ないことがわかりました。
次に投稿画像を被写体ごとに分類・分析したところ、「工房体験に関するユーザー投稿が少ない」「購入後に商品を使用している投稿が少ない」などいくつかの傾向が判明しました。
多くの来場者が集まるRENEWという舞台において、UGCを増やし、ユーザーの感じた「リアルな商品価値」が不特定多数の人の目にとまるような施策は非常に高い拡散効果をもたらします。RENEW運営者並びに事業者の皆様には、店内での撮影スポット設置や体験中の撮影補助サービス、ハッシュタグキャンペーンなどのユーザー投稿を促す様々な施策を提案させていただきました。
成果と課題
本事業では、多様なデータの収集と横断的な分析、市場ニーズやユーザー評価の現状把握、そしてDX施策や新商品開発に関するマーケティング・コンサルティングを実施しました。
福井県においてネット広告出稿及びパフォーマンスデータ分析の実施を行い、データを活用した商品開発・提案等まで行うという一連のサイクルを事業者と共有したことで、広告が認知度を上げるためだけのものではなく、自社の顧客層や興味の対象を把握し、事業改善に役立つデータを取得できるものであるという新たな認識が生まれ、事業者の「稼ぐ観光」への意欲促進に繋がる可能性が見出されました。
さらに、RENEWPay決済データをFTASにてオープンデータ化するにあたり、個人情報の取り扱いについては慎重な協議を重ねました。今回、将来に渡るオープンデータ化の基礎が作られたことは大きな成果と言えます。弊社においても独自に分析サイトを構築し、自治体や事業者にとって扱いやすいプラットフォームの形を探る取り組みに発展させました。
一方、顧客の全体的な傾向を把握するには、アンケートデータの累積による母数の増進や、SNSキャンペーンなどを通したUGC(ユーザー投稿数)を増やす取り組みの継続が必要となります。このことは事業者だけでなくRENEW運営者、福井県観光連盟の共通課題として認識の共有が図られました。
また、POSデータから抽出した売り上げに関する数値を読み解く取り組みは事業者の評価も高かったものの、データ分析を行う前提のもと、POS運用時に設定を最適化しておくことで、より詳細なデータ分析を可能とする必要性を感じました。
この事業によってマーケティングやデータ活用等についての事業者の理解が進みはじめた機会を逃さず、継続的に事業者をバックアップし伴走するシステムの構築や、このような取り組みを地域全体に広げていく機運の醸成が図られれば、事業者それぞれの「稼ぐ力」のさらなる強化が見込めると考えています。
総括: 今回の「観光データ連携機能構築による観光事業者の収益向上に向けた実証事業」を通して
この実証事業は、「勘に頼った政策・商品開発・事業展開が行われている」「観光施策や観光プロモーションの効果や結果が見えにくくPDCAを回しづらい」などの課題に対し、多様なデータをさまざまな視点・方法で活用することによる解決を試みました。
そして当社は、本実証実験の設計及び各事業の実行に深く関わり、データ収集・分析を含めた実務の中で多くの団体・事業者と情報共有・意見交換を行い、福井県という一地域への理解を深めてまいりました。
その中で、データを用いて現状と課題を把握し、ユーザー目線での商品やサービスの開発・改善を行うという道筋(ロジック)を理解する意欲については事業者ごとに差があり、ロジックよりも直接的な結論や提案を求められる傾向があると感じてきました。
当社は、「自身が今どのような状況にあるのか」「なぜこの提案・改善策に至ったのか」を事業者が理解し納得してこそ、集中して結果を出すための取り組みを行うことができると考えております。しかしながら、「データやマーケティングの知識を持つ人材を育成し、データを自ら収集し活用する」というロジックよりも「今何をしたら良いか」という結論に需要が生じたことは、福井県という地域の実情や事業者の限られたリソースを前提に考えると自然な流れであったとも言えます。
このことから、今後当実証事業のようなデータ活用施策を各事業者に普及させるためには事業者への理解促進だけでなく、自治体や観光関連団体の事業者への積極的なサポート、そして福井県という地域を知るコンサルティング企業や知識をもつ人材の育成・活用が鍵となるものと思われます。
本事業で展開された観光に関するデータポータルFTASを土台に、事業者自身が知識や経験を蓄え、さらに地域のマーケティング・コンサルティング企業と手を携えて事業を展開していくことで、本事業が目標とする「オープンデータを活用した新商品や販売促進・観光施策立案を実現し、稼ぐ観光への変革」の実現に近づくことを期待しています。
合わせて今回の実証事業を通じて感じたユーザーニーズやソリューションの課題点、改善点に対応するべく継続的なアップデートを実現し、観光事業者の方々や観光事業者を支える地域のコンサルタンとや企業にとって力となるソリューションの強化を継続していきたいと考えています。
また今回福井県で実施したような先進的な取り組みや枠組を他都道府県へも展開し、国内の観光産業そのものを下支えできるようなソリューションを目指して行きたいと考えています。