地域活性化の鍵を握る観光DX - あわら温泉の稼ぐ力を引き出す「観光マーケティングプログラム」(前編)
2024年6月より芦原温泉旅館協同組合様と進めている「観光マーケティングプログラム」は、観光DXを通じて地域の「稼ぐ力」を引き出す挑戦です。本記事では、プログラム前半で得られた成果や参加者の意識の変化、さらには地域が直面する課題を掘り下げます。
芦原温泉旅館協同組合様を対象に、2024年6月から進めてきた「観光マーケティングプログラム」。このプログラムは、観光事業者がデジタルマーケティングの知識を習得し実践的なスキルを磨くだけでなく、地域事業者間の連携を深め、あわら温泉エリア全体の魅力を向上させることで「稼ぐ力」を引き出すことを目的としています。
本記事では、プログラム前半を通じて明らかになった成果や参加者の意識や行動の変化、そして地域が抱える本質的な課題についてご紹介します。
プログラム終了後には「後編」として、このプログラムがどのように発展し、地域の持続可能な観光促進の一助となったか、その具体的な成果についてお届けします。あわら温泉×観光DXの新たな取り組み「観光マーケティングプログラム」の進展にぜひご注目ください。
1.あわら温泉エリアの観光を牽引する「芦原温泉旅館協同組合」
芦原温泉旅館協同組合の役割
芦原温泉旅館協同組合様は、福井県あわら市に位置する温泉地「あわら温泉」の宿泊施設が加盟する組織です。あわら温泉は明治16年(1883年)に開湯して以来、「関西の奥座敷」として親しまれてきました。組合は各宿泊施設を統括し、温泉街全体の魅力・サービスの質向上に努める役割を果たしてきました。
しかし、観光業界は多様化する旅行者ニーズやデジタル化の進展という新たな局面にあり、さらに福井県およびあわら温泉エリアにおいては、北陸新幹線の延伸による観光客層の変化も予想されていました。この状況を単独の宿泊施設の努力だけで乗り切るのではなく、地域全体で観光価値を高めていこうという声が上がり、温泉旅館協同組合は「マーケティング戦略委員会」を設立。従来の運営方法に加えて、データを活用した戦略的なマーケティングに着手しました。
マーケティング知識をエリアの力へ
データに基づいた観光施策を効果的に進めるためには、データ分析のノウハウやマーケティングの専門知識を持つ人材の育成が不可欠です。そして、あわら温泉エリア全体の認知度向上や観光客の集客という地域規模の課題には、エリア全体で向き合う必要があります。
こうした状況を打開するため、芦原温泉旅館協同組合様は、組合に加盟する旅館にマーケティングの知識を共有し、あわら温泉エリア全体で連携して集客強化を目指す「観光マーケティングプログラム」を企画・実施しています。このプログラムは、地域全体が一丸となって「稼ぐ力」そして「観光価値」を高めることを目的としており、単なる知識の提供にとどまらず、実践的なスキルの習得とエリア全体での協力体制の構築を目指しています。
2.「観光マーケティングプログラム」の背景と目的
あわら温泉エリアが挑んだ福井観光DX
あわら温泉エリアでは、観光客の集客力強化と地域の活性化を目指し、福井県観光DXマーケティングデータコンソーシアムによる2023年の観光DX(デジタルトランスフォーメーション)実証事業に取り組んできました。このプロジェクトでは、データを活用した「稼ぐ」観光施策の推進をテーマとしており、エリア全体でのマーケティングスキルの底上げを試みました。
AI活用でG7政策文書に掲載された地方発の成功モデル - 福井県観光DX
まず、芦原温泉旅館協同組合様は加盟施設から協力を得て、宿泊予約状況のオープンデータ化を実現させました。エリア内の予約状況が可視化されることで、宿泊施設は食材の納入やリソース配置を最適化することができます。また、予約者の居住地等の属性を把握・分析することで、エリア全体のターゲティングや広報施策の最適化につながることが期待されています。
福井県観光データ分析システムFTAS_あわら温泉エリア宿泊予約状況
そして、組合加盟施設である「ホテル八木様」および「あわら市観光協会様」については、「モデルケース造成事業」として、当社basicmathによるデジタルマーケティング伴走支援を並行して実施しました。そして事業者は自らネット広告を企画・出稿し、パフォーマンスデータを分析して改善施策を考えるというPDCAサイクルを実践し、一定の成果を得ることができました。
観光マーケティングプログラム始動の背景
前述の福井観光DXにおける実証事業が終了する際、宿泊事業者や観光協会の現場からは、デジタルマーケティングに関する知識やノウハウの不足を背景に、事業後も個別に施策を継続・実行する余裕がないという声が多く寄せられました。
さらに、全国的な課題となっている人口減少による人手不足や、北陸新幹線の開業による観光需要の変化といった外部要因が加わったことで、これまで以上に戦略的なマーケティングが必要とされる状況にありました。こうして、地域全体の観光価値を高めるためには、個別の事業者だけではなく、観光協会や他の関連団体が連携して取り組む必要性が認識され始めました。
これらの背景を受け、芦原温泉旅館協同組合を中心に「観光マーケティングプログラム」が企画されました。加盟事業者がマーケティングに関する基礎知識を学びながら、地域全体でデータを活用した戦略的な観光施策を考えていこうとするこの取り組みは2024年6月にスタートし、地域連携を強化しながら観光地全体の価値向上を目指す重要なプログラムとして進行しています。
プログラムの目的
① 「稼ぐ力」につながる実践的なマーケティングスキルの習得
このプログラムの第一の目的は、単なる知識のインプットにとどまらず、現場で即実践可能なデジタルマーケティングスキルを参加者に提供することです。月次で開催されるワークショップとSlackを活用した意見交換を通じて、参加者はデータ活用や広告運用のノウハウを深く理解し、実際の業務に役立つ実践的なスキルを習得します。
このプログラムを通して、参加する各宿泊事業者が「稼ぐ力」を高め、直接的な売上向上を実現することを目指しています。
②地域全体の連携強化と観光価値の向上
プログラムは、参加者間の知識共有や情報交換を促進することで、エリア内の宿泊事業者および福井県全体での連携強化を目指しています。観光客誘致やプロモーション施策を地域全体で協力して実施することで、個々の事業者が持つ課題解決を支援するとともに、地域全体の観光価値を向上させる取り組みを進めています。
最終的には、地域全体を持続可能な観光地として成長させる基盤を整備し、あわら温泉エリア全体の発展に寄与することを目標としています。
3. 「観光マーケティングプログラム」の内容
①マーケティングの基礎を学ぶワークショップ
毎月1回開催されるオンライン形式のワークショップは、芦原温泉旅館協同組合加盟事業者様や観光協会の職員の方を対象としたプログラムです。講義形式でデジタルマーケティングの基礎知識を学びながら、質疑応答やディスカッションで実践的なスキル向上を図り、参加者が積極的に取り組みやすい環境を提供しています。また、Slackを活用して質問やご意見も随時受け付けており、参加者のニーズやその時に直面している課題に応じて内容や時間配分を柔軟に調整することで実践的かつ現場に即したプログラム構成にしています。
各回のテーマに基づき、参加者が過去の施策や経験を共有する時間も設けられています。特に、あわら温泉の宿泊予約データを活用した情報共有と議論は、毎回のワークショップで重要な位置を占めています。各宿泊施設の予約状況や集客施策が共有されるだけでなく、数値データと現場の「肌感覚」との整合性を議論することで、より実践的で具体的な知見が得られる機会となっています。
このワークショップは、単なる知識の提供にとどまらず、観光事業者同士が成功体験や課題を共有し合い、相互理解を深める場としても機能しています。
②宿泊事業者と観光協会の連携強化
本プログラムでは、宿泊事業者と観光協会が密接に連携し、効果的な観光促進を実現するための実践的な施策の提案と、その実行をサポートしています。
Instagramコラボ投稿の促進
宿泊事業者と観光協会がInstagramのコラボ投稿機能を活用し、双方のフォロワーを含めた情報発信力を最大化する取り組みを進めています。一般的には、「同じエリア内で宿泊施設が協力することで集客が競合するのではないか」という懸念もあります。しかし、各宿泊施設が異なるターゲット層や独自の魅力を持っていることから、情報発信が重複していても、実際にユーザーが選ぶ宿はユーザーの属性ごとに異なります。
むしろ、宿泊施設同士がコラボレーションを通じてエリア全体の情報拡散力を高めることで、観光客誘致における相乗効果が期待できるという認識が共有されました。この事例では、地域の宿泊事業者と観光協会が協力することで、観光地全体の認知度向上と競争力強化に寄与できることが実証されています。
共同企画によるInstagramキャンペーンの実施
あわら市観光協会公式Instagramのフォロワー獲得を目的に、「あわら温泉ご招待キャンペーン」を展開しました。このキャンペーンは、福井県の特産品である「越前ガニ」の解禁日を前に、芦原温泉旅館協同組合と観光協会が連携して実施したものです。
すでにエリア内の宿泊施設公式アカウントと観光協会アカウントによるコラボ投稿の取り組みが進んでいたため、情報発信力を共有するという考え方は地域内で浸透していました。しかし、全国的に見てもキャンペーンの成果や取得データを他事業者と共有する事例はほとんど無く、ほとんどのケースで事業者は単独で施策を行い、自社データとして保有しています。しかし「稼ぐ力」を向上させるには、地域全体で積極的にデータや知識を共有し、参加事業者の経験値を底上げする必要があります。
このキャンペーンでは、企画の作成段階から参加者全員が積極的に関与し、広告出稿後には効果検証の結果や、参加要件として収集されたユーザーからのコメントを含むデータが共有されました。このプロセスを通じて、参加事業者は企画立案から効果検証に至るまでの一連の流れを具体的に理解することができました。さらに、小規模な施策の共有とその積み重ねが、地域全体の事業者の知識やスキルの底上げに直結することを実感する貴重な機会となりました。
Slackでの情報連携体制の構築
本プログラムでは、Slackにおいて資料やワークショップのアーカイブ動画の共有、共同キャンペーンの進捗確認、施策に関する相談などがリアルタイムで行える環境を構築しました。
事業者同士・エリア内の連携がスムーズに進まない主な要因のひとつに、リアルタイムで情報を共有する手段が不足している点が挙げられます。地方では会議やメールを通じた定期的な情報共有が一般的であり、迅速な意思決定や柔軟な連携を行うための方法がないという課題があります。
当社では、知識を単に提供してスキルアップを図るだけではなく、事業者同士が継続的に連携し、必要な情報を共有しながら意見を交わすことができる「場」の構築が重要だと考えています。今回はSlackというツールを用いて場を提供することで、キャンペーンの進捗管理や意見交換が効率化され、地域全体の連携がで強化される可能性を期待しています。
③地域観光の将来を見据えたマーケティングプランの提案
さらに、地域間の連携を強化し、エリア全体の観光地としてのブランド力を向上させるための取り組みも進めています。
あわら温泉は、福井県内でも特に集客力の高い観光スポットです。このエリアでのマーケティングを強化し、成功事例を積み重ねることは、福井県全域の観光活性化に向けた重要なステップとなります。
今回のプログラムでは、1年間で学びを終えるのではなく、次年度以降も「稼ぐ」仕組みを持続的に実現するためのサポートを行っています。特に、芦原温泉旅館協同組合様が実施するイベントの広告施策では、広告素材やクリエイティブに関する助言を提供するだけでなく、当社が持つノウハウを活用して、効果的なプロモーション手法を提案しています。
そして、あわら温泉エリアでの事例を積み重ねることで「データを活用した観光DX」の重要性と可能性を示し、福井県全域での観光施策の発展に繋げていきたいと考えています。
4. プログラムで得られた成果:参加者に起きた変化
1.マーケティング知識の向上
本プログラムに参加した宿泊事業者は、デジタルマーケティングの基礎から実践的な応用まで、段階的に知識を習得しています。それまで感覚的に行われていた広告出稿やプロモーション活動について、データに基づいた施策の重要性を理解することで、過去の取り組みを見直し、ターゲット層に適したマーケティング手法の検討へと大きな変化を遂げています。
特に印象深かったのは、「ネット広告」に関する議論です。参加者からは、「過去の広告施策が効果的だったかどうか、振り返る機会がなかった」「ターゲティングを深く考えないまま施策を進めてしまい、結果が伴わなかった」といった反省の声が上がりました。また、「広告代理店に任せていたが、費用対効果を追求しきれなかった」といった意見もあり、マーケティング知識を持つ重要性が深く認識されるようになったことは、プログラムの大きな成果といえます。
また、参加者は受け身の姿勢から脱却し、自らの事業にプログラムの内容を積極的に取り入れるようになっています。例えば、Google広告やSNS広告の運用スキルを習得した事業者は、限られた予算内でも効果を最大化する広告戦略を考え、実行に移しています。ワークショップを通じて得たデータ分析の実証として、プログラムの中で顧客層の動向やニーズを基にキャンペーンを企画・実行し、参加者と効果検証の結果を確認するなど、実践的なサポートも行っています。
さらに、Slackを活用した参加者間の意見交換や、ワークショップでの事例共有を通じて、他の宿泊事業者の成功例を学び、それを自社の施策に応用する動きも見られました。エリア内の横のつながりが今後も強化されていくことで、地域全体のマーケティングスキルが向上し、エリア全体の競争力が高まることが期待されます。
このように、プログラムの目的である「売上につながる実践的なマーケティングスキルの習得」は順調に進展しており、今後の組合の取り組みにおいても、マーケティング思考が浸透し、地域全体の観光活性化に貢献する基盤が整いつつあります。
2.過去の施策を見直し新たな可能性を見出す文化の醸成
本プログラムを通じて、参加者の間には「過去の施策を振り返り、新たな可能性を見出す」という意識が徐々に浸透しつつあります。これまで、多くの施策が「集客に結びつかなかった」「予約獲得に繋がらなかった」という結果だけで終わり、その原因を深く掘り下げる機会が十分に確保されていませんでした。こうした状況から、効果の検証が不十分なまま新たな施策に進むケースが散見されていました。
しかし、ワークショップやSlackを活用した意見交換を通じて、過去の施策を振り返る重要性が再認識され、従来とは異なる新しい視点で施策を評価する動きが生まれています。ある参加者は、自身が携わるネット広告のターゲティングやクリエイティブについて、「この内容で本当に適切なのか?」と自問し、過去のデータや他者からの意見を取り入れて施策の再構築を模索する姿勢を示しました。このような「問い直し」のプロセスは、マーケティングにおいて極めて重要な考え方です。
さらに、エリアPMS(宿泊管理システム)データの可視化が進んだことで、宿泊予約状況をより具体的に把握できるようになりました。これにより、参加者は単にデータを鵜呑みにするのではなく、実際の現場感覚とデータとの整合性を確認しつつ、新たな施策を検討する動きが見られています。
この「振り返りと改善」というプロセスは、マーケティングやデータ活用における基本的な考え方であり、プログラムを通じて参加者がこの視点を身につけ始めたことは、地域全体のマーケティング活動における大きな変化の表れであると感じています。
3.地域全体に波及する事業者間連携の実施
本プログラムを通じて、地域内の事業者同士が連携し、観光促進のための取り組みを共同で実施する動きが広がり始めています。これまでは、宿泊事業者や観光協会が個別に施策を行うことが一般的でしたが、プログラムの中で行われたワークショップやSlackを活用した意見交換を通じて、「エリア全体での連携」で見えてくる大きな効果を参加者は感じ始めています。
例えば、あわら温泉エリア内では、宿泊事業者同士がInstagramのコラボ機能を活用し、共同で情報発信を行う取り組みが始まっています。また、観光協会が中心となり、イベントやプロモーションを地域全体で計画・実施する動きも活発化しています。
このように、地域内の事業者が連携することで、個別の施策だけでは到達できなかった効果を生み出し、エリア全体の観光価値を向上させる動きが進んでいます。
【参加者の声(抜粋)】
・講義について
自社ウェブサイトに当社のこだわりが表現できていない。講義を聞いてみると、顧客目線での情報が気になるようになった。
広告に早急な結果を求めていたが、講義を受けて、長期的な見通しが必要だと感じた。
- 過去の施策について
ウェブサイトを作る際、デザインに目が行ってしまう。事業者側で読み込みのスピードや顧客目線での課題に気づくのは難しい。
広告代理店に依頼した広告は結果をレポートで受け取っていたが、プログラムで学べたような評価の基準がわかっていなかった。
サービス紹介の広告ではなく、ユーザーの声を広告施策に活用する必要性を感じている。
- エリアでの連携について
目指す温泉地のイメージは宿ごとに異なっているが、知名度を上げたいという意識は全宿で共通している。
福井県全体の産業の底上げ策として、観光の発展が位置づけられるべきだと思っている。
5. 見えてきた課題:観光DX推進に立ちはだかる壁
プログラムを通じて着実に成果が見えてきた一方で、学んだ内容を実践に移すための機会や体制が十分に整っていないことが、観光DX推進における大きな課題として浮かび上がっています。その原因には、次の2つが挙げられると考えています。
1.マーケティング施策の優先度が低い
本プログラムを通じて参加者はマーケティングの知識を習得し、その意義やデータ活用の重要性を強く実感しています。しかしながら、各事業者の内部事情として、日常業務の中でマーケティング施策の優先度は高くありません。
特に人手不足が深刻な現場では、日々の運営や接客に追われ、マーケティング活動に充てる時間やリソースが不足しています。その結果、プログラムで得た知識やスキルを実践に移す機会が十分に確保できない状況があるものと思われます。また、マーケティングそのものが組織内で重要な業務として認識されていない場合には、経営層からの理解やリソース配分が進まないことも、施策の実行を妨げる要因となるでしょう。
この課題を解決するためには、現場スタッフのスキルアップだけでなく、経営層がマーケティングの重要性を理解し支援する体制づくりが必要となります。
2.地域内連携への抵抗感が存在する
地域内の事業者は、それぞれに抱えている課題や目指す方向性が異なるため、共通の目標を設定することが難しい場合があります。例えば、各宿泊施設で地域の魅力をSNSや公式サイトで発信する取り組みを連携して推進しようと考えた場合でも、個別の宿泊事業者にとってそれが直接的な利益に繋がらない場合、時間やリソースを費やすことに抵抗感を持つケースが想定されます。
このような状況下で地域全体の取り組みを進めるためには、観光協会などの中立的な組織が中心的な役割を果たすことが重要です。あわら温泉エリアでは、観光協会が率先してデータ分析、情報共有、発信活動を行い、エリア全体を巻き込む形で効果的な施策を推進し、成功事例を示すことで、宿泊事業者をはじめとした地域内の事業者の意識を少しずつ変え、連携の重要性を浸透させることが可能になると考えています。
当社はあわら市観光協会様と継続的に連携し、「どのような情報発信がエリア全体の集客効果を高めるのか」「観光協会と旅館組合がどのように連携していくべきか」といった課題について、協議を重ねています。観光協会が中心となることで、個別の事業者が抱える負担を軽減し、連携のハードルを下げることが期待されます。
6. 「観光マーケティングプログラム」前半を終えて
地域ブランド力向上のためには連携の強化が必要
地域全体のブランド力を向上させるには、事業者同士の連携を深化させ、エリア全体での一体感を醸成することが不可欠です。観光地としての競争力を高めるには、地域全体が魅力的であると感じられるような統一感のある取り組みが求められます。
まず、地域内の宿泊事業者や観光協会が、それぞれの目標や課題を共有し、全体で達成すべき共通のビジョンを描くことが重要です。例えば、「地域の観光客満足度を一定以上に向上させる」や「特定の季節イベントを地域全体で推進する」といった具体的な目標を設定することで、事業者間の連携がさらに進むでしょう。
また、データを活用した情報共有や施策立案も、地域ブランド力向上の鍵となります。観光協会が中心となり、宿泊予約や観光客の動向データを収集・分析し、それを基に効果的な施策を地域全体で実施することで、エリア全体の魅力が強化されると期待されています。
さらに、プログラムで生まれた成功事例を他の事業者にも共有することで、地域内でのノウハウの蓄積と共有が進むと同時に、あわら温泉エリアの取り組みを福井県全体に波及させることが可能です。このような連携は、個々の課題を解決するだけでなく、エリア全体の競争力を底上げする重要な要素となります。
観光マーケティングプログラムの後半に向けて
「観光マーケティングプログラム」は、地域全体の観光促進と宿泊業の発展を目指し、2024年6月にスタートしました。これまで、参加者はデジタルマーケティングの基礎知識を身につけ、SNS広告やターゲティングのスキルを習得し、広告戦略の見直しや施策への応用といった成果を上げています。また、ワークショップを通じて事業者間の交流が活発化し、成功事例や課題の共有が新たな施策に活かされる動きも見られています。
一方で、学んだ知識を施策に十分反映できていない事業者が存在することや、リソース不足や優先度の低さが課題であることも明らかになっています。
プログラム後半では、これらの課題に対応し、参加者が学びを実践に結びつけられる体制を強化する予定です。特に、観光協会を中心とした情報共有の仕組みを整え、データを活用した施策をより具体的に支援します。また、エリア全体での観光価値をさらに高めるため、成功事例を基にした実践的な取り組みを加速させ、地域全体の活性化に向けた土台を築いていきます。
当社は、あわら温泉エリア及び福井県全域の観光振興に貢献するため、引き続き参加者とともにプログラムの効果を最大化し、次のステージを目指していきます。